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融通手形相手の不渡りにより自社手形を不渡りにしながらの再生・再建|再生による再建事例

自社手形を不渡りにしながらの再生・再建

依頼内容

愛知県のL社は、小住宅建設会社として古い経歴を持っていたが、徐々に経営が悪化。

経営難から融通手形を発行し合い、相手先の不渡りにより10日後に迫った自社手形が不渡りとなる連鎖倒産危機からの脱却を依頼された。

経緯

社長はコンサルタントや弁護士のところへ相談に行っても断られ、最後に私のところへ相談に来られた。

面談すると、その月末の自社発行手形約3,000万円の決済が出来ないという。

なんと、懇意の会社と手形を融通し合い、相手先からの受取手形が不渡りになったのであった。

再建方針〈不渡り前提での再建〉

社長は、ここで倒産させたくはないという。

そこで即「再生」の考え方で再建に入った。

不渡りを宣言した上で、取引先、仕入先、お客様、銀行、社員などの協力を得ながら再建していくものである。

相談を受けたのが20日、10日後の月末には2回目の不渡りとなる。

不渡りとなってからでは、そのまま不渡り即倒産の流れに飲まれてしまう。

そのため相談を受けた当日から翌朝までに全ての再建方針を固めた

再建方法

再建計画書

① 再建計画書の作成

全債権者の協力を取り付けるためには、再建計画書が必要である。

過去3か年の決算書から収益を分析。
今後の流れを予測し、計画書を作成した。

これを時間が無いため翌朝までに作り上げた。

翌早朝、私の下手な文字をパソコンで清書するために待機し、数時間で作り上げて下さった

税理士事務所職員の協力があればこそ出来上がったものであり、感謝である。

この計画書作成時は、収益率を分析、徹底した合理化により営業利益を出した。

もちろん売上を伸ばすのではなく、下げ止まりの売上高を予測した上での収支計画である。

翌朝、社長と細部を煮詰め、
再建計画書が完成した。

② 銀行への不渡り通知

各取引銀行へ計画書を提示しながら、今月末に手形を不渡りにすることを通知。

保証協会付き分は代位弁済して頂き、プロパー分については金利に満たない額となるが、少額返済をお願いした。中には親切な支店長もおり、融資を考えてくれた。

しかし、融通手形をしていたことと、借りても返済は困難であることが分かっていたのでやんわりとお断りした。

③ お客様への通知

現在、施工中のお施主様や取次代理店などに通知。

将来への再建計画が出来上がっているので心配しないよう動揺を抑えた。

④ 社員への通知

外部の動揺を抑えながら社員に対し説明、社長の意思を伝えた。

同時に人員整理を行った。
人財、人材を残し、人罪を解雇した。

このときは、肝心の工事部長が経営悪化の一因となっており、社長に対する反発もあった。

この部長に辞めてもらい社員の気持ちをまとめ、再スタートした。

⑤ 債権者集会の開催

計画書に基づき、仕入れ先や協力業者などの債権者集会を開き、様々な質問に答え、協力を得た。

債権者集会と言っても弁護士がやるような配分金額を一方的に決めるような簡単なものではない。

100%完済することを約束しながら、1/100位ずつの返済を承知して頂く厳しい話し合いである。

次から次へと矢継ぎ早に質問が飛び込んで来る。

答えようのない社長を隣に置き私が一つ一つ丁寧に答えた。

座ることも許されず2時間も立ちっぱなしだった。

建設業なので、債権者も多く、金額も大きい。

そのため中には弁護士や銀行マン同行で専門的な厳しい質問や追及をしてくる。

これを乗り越えるには、どこから追及されても完璧に答えられる客観的整合性を持った再建計画書が必須となる。

このような経過を経て、月末の手形を不渡りとした。

⑥ 不渡り手形の処理

不渡り手形のジャンプ(期日書き直し)ではなく、最初から不渡りにすることを公言して、有効に活用してもらうようにした。

手形不渡り救済制度などを、利用し易くするための配慮であった。

そして、手形の分割納付を確約する文書を手渡した。

このようにして、2ヵ月位で不渡りによる混乱から落ち着きを取り戻し、全社一丸となっての再建が始まった。

再建への歩み

再建への歩み

不渡りとなった大混乱の後、一歩一歩、あらゆる難題を片付けながら再建へ踏み出した。

L社は小さいながらも住宅メーカーでもあったので、経営方針の転換を重視した。

① 経営理念の確立

なんのために仕事をするのかを再確認。

改めて経営理念を作った。

② 経営方針の決定〈販売代理店方式から直販へ〉

それまでの代理店を通しての販売では、利益率が薄いため、インターネットを使った直販へと方針を切り替えた。

そのために住宅メーカーとしてお客様に訴えるための体制を整えた。

  1. 展示場の建設
    社内に常設展示場を作り、一目で納得して頂けるようにした。
  2. 在庫の処分
    倉庫に満杯の昔からの在庫は、思い切って処分しその跡地を展示場とした。
  3. 事務所を新設
    今までは暗く狭い事務所だったため、敷地内で移転した。
    新たに商談室を設け、お客様とゆっくり話し合えるようにした。
  4. ブランディング計画
    新たに特色のある住宅をラインアップ、パンフレットなどを一新した。

③ 営業改革

住宅メーカーとしての営業マンを育成し、営業の改革・手法の基本の徹底をするため定期的勉強会を開催。

P(計画)D(実行)S(反省)運営など徹底した。

④ 財務改革 財務を重視

新たに経理担当を採用。

収益性重視の財務体算を目指し、特に予算管理を徹底した。

今まで利益率を軽視し、最後まで利益の把握が出来ずにいた。

これを実行予算書の作成を義務付け、赤字工事を許さないことにした。その他、住宅メーカーとしてあるべき姿を追求し続けた。

再建の結果

再建の結果

こうした再生の結果、順調に歩みだした。

翌年に起きたリーマンショックも乗り越え、順調に推移している。

再建コンサルタント:古川益一のコメント

古川益一

この再建過程に於いては、各金融機関と心を込めて不渡りを出すことの事前打ち合わせをしていきました。

融通手形であっても、表面上は不渡り手形をもらってしまった事と、
被害者の立場で
あることを装ったのでした。

その時、ある銀行の支店長は緊急融資を提案してくれました。

大変ありがたがったが、実情は悪質であり、その行為を受けるわけにはいかず、丁重にお断りしました。

どんな時でも、誠意というものは忘れてはならないものです。

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