7年間の滞納税を摘発され、ほぼ継続不可能となった会社を話し合いで解決、再生再建した。
相談内容
M社は建設関連の下請会社として経営してきたが、なんと決算をしていなかった。
最初は、罪悪感があったものの次第に薄れ、平気になってしまっていた。
そして、7年後‥、親会社に税務署が査察に入り、その会社から支払われていた金額から決算をしていないことがバレてしまい、呼び出しを受けたのであった。
これは大変なことになったとM社長は、会社の倒産を覚悟しながらも私の所へ相談に来た。
診断結果
7年前から決算をしていないが、毎月の売上や経費伝票は捨てずに保管してあった。
それならば、10日後に迫った呼び出し日迄に7年間の決算書を作成して当日 持ち込み、誠意を尽くせば何とか生き残れる可能性はある、と判断した。
解決方法
正味1週間の間に7年間分の損益計画書、賃貸対照表、経費明細表などを整理、決算報告書を作成しなければならない。
普通のやり方では、不可能である。
そこで、以前から提唱している超簡単決算書の作り方に沿い、その夜の内にM社専用の財務諸表のテンプレートを作り書き込むだけとした。
M社長は、事の重大さに気力が落ち、時間的にも一人で作成するのはかなり厳しい状況と思い、実姉に事情を説明した。
案の定、弟の失態に激怒しながらもこの緊急事態に姉も協力を承諾。7年分の領収書、伝票整理から工事台帳を作成、親友T氏も仕事を有給休暇を取り協力し何とか7年分の資料をまとめた。
段ボール3箱にぎっしり詰め込んだ物を私の自宅に持ち込み、7年分前からの決算書を2人で作成を始めたのである。
7年間と言っても7年間分が連続していなければならない。きちんとした決算をしたら、とても間に合わない。
そこで、この程度の誤差なら許されるだろう、という妥協点を勝手に予測して作り上げていった。
決算書の作成
①各工事毎の工事伝票の作成
7年間の全工事の売上高、売上原価、売上利益の明細と各工事毎にまとめた。
1ヵ月平均5件×12ヵ月×7年間=420枚である。
②月間売上明細表の作成
毎月の工事伝票をA3用紙に1ヵ月毎にまとめた。
12枚×7年分=84枚である。
③月間一般管理費明細表の作成
1ヵ月毎の一般管理費をA3用紙1枚にまとめた。
12枚×7年間=84枚である。
この②月間売上明細表と③月間一般管理費明細表により、損益計算書の7年間分が完成した。
④賃貸対照表の作成
最低必要限の数字として1年間に1枚ずつ作成した。
《時効は考えず誠意を見せるために7年分作成》
この作業を7日間ぶっ通しで行った。
時効もあり5年間で済むことだが、敢えて誠意を見せるために7年間分をきっちりと作成した。
最初の3日間は、我が家に泊まりながらの作業だった。
私と妻も一緒に付き合わされ、お陰で折角来た孫の“お泊り”にも一緒に寝れなかった。そして手書きの財務諸表を、娘が待機、パソコンで正式な決算書に仕上げていった。
税務署訪問
指定された日時に、M社長と同行出頭した。段ボール2箱分を持ち込み、提出した。
誠意を尽くした態度で接し、私はM社長が、「自殺しないよう祈っている」と訴えたところ、誠意が通ったのか、担当官の態度がガラリと変わった。非常に親切な態度に変わったのである。
本来なら悪質な脱税者としての重加算税を課せられ、倒産に至ってもおかしくないところである。
その日最後は、和やかな雰囲気となり、退出した。
2回目の税務署訪問
それからは、私が一人で訪問した。
決算書の不明は部分を説明したり、修正したりしなければならない。そして、法人税計算や、届け出書類など全て、担当官が変わりにやってくれた。
何度か電話があったが、その時、乗っているバンの燃料はガソリンか、軽油かと聞かれた。
何故聞くのか不思議に思っていたら、なんとガソリンは国税、軽油は県税であるため、税率が違うので、なるべく低くするために聞いたのだと言う。
あまりの親切さにびっくり、感激した。
こうして、数度の打ち合わせを繰り返し、最後にM社長と同行、税額が決定した。
当初、覚悟していた金額とは桁が違っていた。重加算税などの罪金も無く、数十万円で済んでしまった。しかも、数回の納付で無事完納した。
決算費用もいらなかったのである。
こうして助けて頂き、一つの人生ドラマとなった。
その後
このような体験を経て、M社長はとても律儀な人間に生まれ変わり、立派な経営者として活躍しておられる。
この場合は、経営者自身の心構えの再生再建に当たるものである。