相談内容
ある地方の観光会社からの依頼である。
B社に会社再建のために訪問したところ、その場でS社長夫人から友人のYさんを紹介された。
Yさんは観光業だが、前社長が多額の借入金を残したまま辞めてしまったとのことである。
借入金は10億円もあり、返済出来る金額ではない。
このまま倒産するしかないと思って諦めていた所、S社長夫人から紹介されて私に会いに来たとのことであった。
とても急を要することだったので、その日の内にYさん宅に伺い、泊めてもらうことにして詳しい話を聞いた。
現状分析と再建方針
Yさんはオーナーであるが、経営に携わっている訳ではなく、Oさんに任せていた。
ところが、Oさんは乱脈経営で巨額の借入金を残したまま辞めてしまい、どうして良いか分からないとのことである。
決算書を見ると、粉飾決算により利益があるように見せかけて、借り入れを繰り返す方法で破綻を遅らせていた。
しかも、借入金の中から着服していたことが判明した。
借入額は年商の5倍以上の借入残高に達しており、倒産するしかない状態だった。
そこで「金融機関と話し合いながら円満に倒産する方針」とした。
金融機関との打ち合わせ
翌日、借入しているG信用金庫本部役員と話し合った。
「お互いに協力し合いながら円満に倒産処理をしてゆく」方針を確認した。
そしてG信用金庫職員に常時出向してもらい、資金面の面倒をお願いした。
こうしてG信用金庫と協同での再建が始まった。
月間営業利益の計上に成功
遊休資産、備品などを売却。
スリム化を計りながら徹底してムダを省き、月間の営業利益を計上するまでになった。
円満倒産への道
G信用金庫は地方の小規模な金庫であり、いきなり倒産すると、その年に10億円もの損失が発生。赤字決算になってしまう。
そこで、その損失をカバー出来る引当金を用意出来るまで待つこととした。
それまでは、現経営体制で続行することを約束した。
それから10年経過
G信用金庫とコミュニケーションを密に取りながら、10年が経過。
倒産処理をすることを合意した。
このコロナ禍のため思うようにいかないが、会社の購入先を募集し、同時にYさんの住宅を残し、且つ連帯保証人から外してもらう約束にて倒産。
そして、現社員共に購入先の新体制に移行するよう動き始めている。
特に社長はまだ若くこれからであり、社長と社員が新しい人生を歩んでもらいたいと願っている。