握り歩むが 経営者なり
本日の道歌は、経営者に求められる二つの視点を、印象深い比喩で静かに描き出しています。
遠くの山を見つめることは、将来の目標や理想の姿を見据えることです。一方で、手の中の累卵を慎重に握って歩くことは、いま目の前にある現実の危うさや繊細さを忘れずに進むことを意味しています。
経営とは、ただ夢を語ることでも、ただ目先の安全だけを守ることでもありません。未来を望みながら、足元を誤らないこと。その両立にこそ、経営者の姿があるのではないでしょうか。
本文では、経営者には常に二つの視点が必要だと語られています。一つは、将来に向けた目標地点を見据える視点。もう一つは、現在の状況を冷静かつ慎重に見極める視点です。この二つは別々のものではなく、経営の中で同時に持ち続けるべき視点として示されています。
未来の姿は陰、現在の姿は陽と捉えることができる、という表現も印象的です。未来を描くことは長期計画であり、現在から直近の未来を見据えることは短期計画となります。つまり経営とは、時間の異なる二つの地図を同時に持ちながら進む行為なのです。
特に経営再建では、現在の姿と未来の姿を同時に描き、その時間的な隔たりを縮めて一体化させることが重要だとされています。そのための形が「再建計画書」であり、通常の経営においては「定期経営計画書」がその役割を担います。
経営に必要なのは、そのどちらかではなく、両方を同時に持つことなのかもしれません。
本文では、計画を立てるコツとして「過去を客観的に分析し、未来をあえて悲観的に見積もること」が示されています。これは臆病になるためではありません。実行段階で楽観的に力を発揮できるようにするための、事前の知恵です。
慎重に見積もっておけば、実行に移るときには余計な恐れに飲まれにくくなります。逆に、未来を甘く見すぎると、現場では不安や焦りが生まれやすくなります。計画段階では慎重に、実行段階では前向きに。この切り替えが経営の安定を支えるのです。
経営者とは、遠山を仰ぎながら累卵を握る人。大きな理想を抱きながら、いま目の前にある現実を壊さないように進む人。その姿勢が積み重なったとき、経営は無理なく安定し、やがて大きな成果へとつながっていくのではないでしょうか。


















