「誰に事業承継をすればいいか」「M&Aがいいのでは」「廃業するしかない」...。
このようなことを考える前に、事業承継にはやらなければいけないことがあることをご存じですか?
この「やらなければいけないこと」に取り組んだ会社は、事業承継の選択肢が広がり、後を継ぎたいという人がいなかったにも関わらず、無事、承継できるなど、事業承継の成功を実現しています。
ところが、事業承継を考えているほとんどの人がこのことを知りません。なかなか思うような事業承継ができないのはこれが理由なのです。
事業継承を成功させるには
一生を通して築き上げた会社です。出来ることなら、誰かに継いでもらいたいと願う経営者は多いものと思います。
それでは、後を継いでもらうにはどのような会社にしたら良いか?ということになります。
当然のことですが、毎年利益を計上しており、財務内容も健全であることが理想です。そのような会社はそれほど苦労しなくてもM&Aなど成立できるものです。
しかし、
「赤字が続いている」
「借入金が多く返済も滞っている」
「社員間の仲が悪い」
「財務内容が不健全である」
などの場合、簡単には継承は出来ません。
それでは、どうすれば良いか?
事業継承をするために事前にしなくてはならないことを考えてみましょう。
伸びる可能性のある樹に剪定しましょう。
私は、「経営」をいうものを一本の「経営の樹」に例えています。
従って、現在どんなに曲がりくねっていようとも、枯れかかっていようとも悪い部分を入れ替え、剪定することにより、伸びる可能性のある状態にすれば良いことになります。
根から枝葉まで、一つ一つ考えてみましょう。
大きく育つ予感がする樹
①根っこを大きく伸ばす=経営理念を作る
根っこは、経営理念です。今一度、経営理念は何であったか?確認又は思い出して下さい。赤字会社は、この根っこが張っていないものです。
設立当初、夢を持って起業した時、社会に役立つ会社にしようと思っていた筈です。
改めて、我社の経営理念を掲げて下さい。ポイントは次の3つです。
- 誰の目にも明らかで、世の中に素直に受け入れられるものであること。
- 夢とロマンに満ち、将来に希望を与えるものであること
- 社員に自信と誇りを持たせるものであること
このポイントを外さないで作り直して下さい。これは目に見えるものではありません。経営者の心構えで出来ることです。
②経営方針を確立すること
経営理念を実現するための方針を作り直して下さい。
現在の方針を見直し、社会に貢献すると同時に社員や関係者の幸福を考えた方針を作って下さい。
これもすぐ成果が出る必要はありません。
誰の目からも社会に貢献する会社であることを分かってもらうために作りましょう。
③枝を剪定すること
経営の樹には大きく3本の枝があります。ヒト(組織)、モノ(営業)、カネ(財務)の3つです。これの枝ぶりを良くしましょう。
- ヒト(組織)
余分な小枝を剪定しなくてはなりません。ヒトを「人財」「人材」「人罪」に分け、人罪となっている社員の解雇を考えましょう。そして、社員と良く話し合い人財となる人を育てましょう。 - モノ(営業)
利益の出ない分野は撤退し、本当に自社のためになっている分野のみを残しましょう。売上を増やすことは考えず、利益率の伴う事業のみに縮小しましょう。 - カネ(財務)
徹底的なスリム化を考えましょう。余分な資産の処分、そして経費のムラ、ムダ、ムリを排除しましょう。そして、財務内容の健全化を考えましょう。
1.債権の縮小化
- 経営者への貸付金、仮払いを0にする
これは、経営者の公私混同ととられ、最も嫌われることです。様々な方法があります。多少の問題はあるにしても、会社としては放棄する位の勇気が必要です。(最も問題になるのは税金ですが、赤字会社の場合、それ程追求されることはありません。) - 不良債権を放棄する
いつまでも回収不能な売掛金や在庫は放棄しましょう。 - その他
可能な限り不健全なものは処分、整理しましょう
2.債務の整理
未払金や借入金の整理をしなくてはなりません。それぞれ考えましょう。
- 未払金
仕入代金など完済するか、分割払いの話をして明朗にしておきましょう。 - 借入金
銀行と話して金利のみとして残した場合、他の資産と釣り合いが取れなくなった場合は債務過多となり、事業継承は困難になります。この場合、きちんとした理由と誠意により、債務免除をお願いする必要があります。
つまり、経営破綻により、借入金を無くす方法です。会社の登記は抹消することになりますが、外部に分からなければ、特に問題にはなりません。未納税金なども同じです。
3.枝葉を整えること
枝葉とは、マニュアルなどを整備することです。
実際の仕事に支障が出ないよう仕事の一つ一つについて細かなマニュアルの作成をしなければなりません。
4.情報の整備
情報とは、お客様を始め、関係者との関係を「情けが通じ合う」関係にしておく必要があります。
- 得意先の情報
- 仕入先の情報
- その他の情報
これらをまとめ、きちんと剪定すれば、これから伸びる予感を与えることになり、事業継承は成功するものと思います。
5.最後に土壌の改良です
土壌とは、経営者の品性です。
品性を一口で言うと「誠意」です。
「誠意」とは、「言葉が成ること」つまり「嘘をつかないこと」に行き着きます。どんな相手であれ、誠意を以って応対していけば、明るい結果を得られることと思います。
以上が、事業継承をするために必要な作業です。ポイントは、中途半端にしないで、どこへ出してもおかしくない会社にすることと考えて下さい。