M&A(事業継承の一方法)
M&Aとは、Mergers(合併)とAcquisitions(買収)の略ですが、発音が難しいためかエムエンドエーと言われています。
しかし、本来は吸収合併と言うよりも事業継承と言うべきものであり、business(事業)、inheritance(継承)、つまりB&Iが正しい呼び方と思います。
いずれにしても、現在の会社を後継者不足などにより、他に継承することは暗いイメージを持つことなく、経営再建手法の一つとして扱うべきものと思います。
さて、事業継承の方法ですが、継承を望む会社の経営状況によって成立する可能性は大きく左右されます。
経営状態を3つに分けて考えてみましょう。
1.経営状態が健全な会社
健全な会社とは、次の5点を達成している会社のことです。
①黒字経営を計上していること
仮に赤字決算としたら翌期は黒字とすること。どんなに悪くても、3期連続赤字決算は避けなければなりません。
②誠実に経営していること
不正な経理、社長の公私混同、粉飾決算などをしていないことが最も大きなポイントになります。
③会社の価値を傷つける隠れた瑕疵が無いこと
表面上には表れない借入や、滞納税金などがないよう、常にきちんとしていなければなりません。
④買い手企業に対し、軌道に乗るまで応援できること
売ってしまえば終わりではなく、売ってからでも求めに応じて協力を惜しまないこと。完全に譲渡が完成するまで、社長は買手会社の社員として残ることを、条件にする場合が多いものと思います。
⑤オンリー1を持っていること
独自の商品や技術、そして、優れた社員に恵まれ、優良な顧客を持っている会社は特に注目されると思います。
このように会社の持っている技術や営業力を求める会社があれば、M&Aは成立します。M&Aは後継者に悩む会社の一つの譲渡方法として一考の価値はあり、私も積極的に進めています。
2.経営状態は良好ではないが、再建により、健全経営になれる会社
この場合、出来れば良い会社に再建してから事業継承したいものです。
再建の方法については、この再生コンサルティングメニュー①事業の継承に詳しく述べておりますので、参考にして下さい。
3.赤字が続き、再建の目途が立たず将来性のない会社
この場合が、最も問題です。事業継承をしたくても、倒産寸前の会社を引き受ける会社はありません。
しかし、事業継承をしたい会社の多くは、このような赤字会社です。
私は、再建コンサルタントとしてどんな状態であっても必ず再建する覚悟を持って引き受けていますが、その中で再建の可能性が限りなく小さい場合は、
「転生」+「倒産」
のやり方で再建しています。
「転生」とは、現在の会社から新しい会社へ転じて生む方法であり、「倒産」とは、会社を倒して新しく幸福な人生を産む方法です。
転生について
その「転生」について説明します。
転生とは、現社長ではどうしても続行出来ない場合に、子供や後継者に転じて生かすことを考えることです。
その際、負債等は旧会社が持ったまま消滅させ、新しい会社は良い部分のみを継承していく方法です。
経営者が精神的にも健康上でも限界になってしまった場合に用いる方法です。
【1】転生を行うには綿密な計画が必要
転生先企業が円滑に経営できるようにするには、旧会社との関連性を疑われないよう万全の注意を払うことが必要です。ほとんどの会社では借金があるため、息子や番頭などに継がせることをためらっていますが、転生は、そのような会社に取って極めて有効な方法です。
①旧会社と転生先会社とは、縁のないようにしなければなりません。
債務逃れの疑いをもたれるからです。
②転生に至る経緯は、客観的に認められるストーリーに作り上げることが重要です。
一歩間違うと、計画倒産になるからです。
③新しい会社の出発の拠り所となるものとして、完全に一から出発する経営計画書が必要です。
【2】転生の方法
転生は、様々な債権者と円満な話し合いをしながら現社を閉鎖していく方法であり、極めて難しい方法です。
それには、知識でなく真理の考え方を用いて進めてゆきます。
ほとんどの社長が、ストレスなどにより健康を害しており、あらゆる状況を考えながら進めてゆきます。その方法は書面に表すことが出来ないほど微妙なものですが、知識と知恵を絞ればなんとか成功していくものです。
このやり方により、事業継承をしていきます。私の事業継承のほとんどはこのパターンです。
このやり方をM&Aコンサル会社に勧めていますが、乗ってくる会社はありません。最初から困難であると諦めてしまっているようです。
しかし、事業を他に引き継いで欲しい会社の大半は、経営困難に陥っている会社です。
これからこの方法が広まることを願っています。
~Column M&Aと転生の合わせ技~
M&Aについては、私自身約30年前ホテルの売買を通して経験していますが、かなり複雑であり、M&Aの条件に当てはめることは難しいのも現実です。
求められる会社は、
「優秀な社員や技術者が多く在籍している」
「オンリー1を持っている」などですが、やはり決め手となるのは「経営者を中心として調和の取れた、経営基盤を持った会社」です。
しかし、何らかの事情で数字上の問題がある場合などは、売り手の会社の債務を整理、圧縮して資産に見合う財務内容にした上で、売却する形を取る方法を用いています。
つまり、M&Aと転生の手法を合わせて用いる方法です。