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連続2期赤字決算、倒産危機から会社再建|水道管工事会社の再建・再生事例

真の再建事例 “再建から再生へ”

経営危機に陥った経営者からの相談に応じるようになり、20年が経過しました。

真理の言葉の一つとして、「己のためにすることが人のためになり、人のためにすることが己のためになる」があります。

この言葉を実践することにより、多くの気付きを頂き、自分自身も成長させて頂けたと感謝しています。

そして、最近になり「再建と再生の違い」をはっきり掴むことができたように感じています。今まで、再生を 4 つの再建方法(改革、再生、転生、倒産)の一つとしてきました。

ところが、この4つでまとめられない一つの形が続出してきているのです。まさに、再建を越えて再び生まれ変わったと言うべき再生の姿です。

今回は、その中の一例を紹介します。

真実の再生事例

■会社概要

  • 水道管工事業 創業平成 27 年
  • 地方都市M社
  • 役員、社員、技術者含め9名

■平成 31 年当時の状況

  • 連続2期赤字決算、今期も赤字必死の状況
  • 資金繰りの目途が立たず、あと2ヵ月で倒産が見えていた

このような状況で再建依頼を受けた

■再建実行

全てを見直し、今期決算黒字化を目指した。

  1. 売上の低下を予測
    「売上を減らしながら、利益を上げる」方針とし、売上利益率の重視により、売上利益を確保した。
  2. 人件費を削減、売上利益の40%に納めた
    人罪に当たる社員の解雇と同時に若手社員の教育を行った。
  3. 不適正な経理処理の修正
    貸借対照表では、好ましくない経理処理が行われていた。

これを、大なたを奮い改めた。

社長への貸付金、未払金を始め、借入に不利となる項目を改善した。こうして、再建依頼された当期の決算を黒字とした。

しかし、これは形の上でのこと、テクニック上の黒字決算に過ぎない。

これからが真の再生であった。

再建後2期目の状況

2期目の上半期は大幅な赤字となってしまった。2期目に入った途端、売上げは伸び悩み、あちこちにほころびが出始めたのである。

次の状況である。

  1. 売上が伸び悩む=施工ミスが多発する
  2. 売上利益率が低下する=赤字工事が出る
  3. 人件費比率が上がる=社員のやる気が減退
  4. 販売管理費が元に戻り、増え始める=緊張感が足りない

これらにより、毎月赤字が続き、下半期の計画を作りたくても出来ない状況となった。

再生計画

このまま進むと今期決算は大幅赤字となり、折角再建したのが元の木阿弥となってしまう。これからが真の経営再建になる。

社長の奮起

社長の奮起

一旦黒字に回復、再建が成功出来ても元に戻ることが多い。これは、真の意味での再建ではなかったことを物語っている。

ここで始めて社長自身の心に灯が点った。

一昨年の倒産寸前の苦しみを思い出したようである。なんとかして、挽回、今期も黒字決算を迎えようと決意したようであった。

再建のための反省

なぜ、このように業績が悪化したのか?その原因の追求と共に反省を重ねた。

1. 経営者としての自覚が足りなかった。

  • 社員に任せっきりにした。
  • お客様へのあいさつを欠かした。
  • 経営への情熱が薄れていた。
  • 売上利益率へのこだわりが欠けていた。

その他、全てにおいて経営者としての自覚が足りなかった。

これらを猛省、即行動に移した。

2. 仕事に対する自覚を問い直した。

私たちは、水道工事業を営ませて頂いている。どの蛇口を捻っても飲める水が出る国は、世界中で日本だけである。

その貴重な国の配管工事をさせて頂いていることに感謝と誇りを持とう!

3. お客様を大切にしなかった。仕事を待っていた。

「仕事とは、仕える事」を再認識し、お客様へごあいさつに伺おう。

4. 社員と一心同体になろう

社員の能力を向上させることも社長自身の使命である。せめて、自分以上の技術を身に付けるまで親身になり指導しよう。

このようにして、一心同体となり再び社内に明かりが点り始めた。

5.結果

社長は、とにかく良く働いた。日中は社員と共に動き、お客様とのコミュニケーションを密に取るようになった。

そして、夜間は自社作業場で配管の部品作成など、遅くまで連日連夜働くようになった。

すると、不思議な現象が起こり始めた。

  • 一旦断られた仕事が、再び「やっぱりお願いする」と言って舞い戻ってきた。
  • 社員のミスが減ってきた。社員自らが働くようになってきたのである。
  • 赤字と思われていた工事が黒字になった。それもお客様が発注額を増やしてくれたものである。
  • 取引銀行が「お金を借りてくれないか」と誘ってくれるようになった。
  • 社長自身の心身の健康が回復した。

このようにして、上半期連続赤字が 7・8 ヵ月で黒字に転じた。

6.再生から発展へ

こうして、今期黒字決算の目途がついてきた。

しかし、面白いものでこうして勢いがつくとなかなか止まらない。そこで、現在の仕事にプラス 1 を加えようということになった。

プラス 1、つまり、オンリー1 の追求である。

オンリー1 の追求=働き甲斐改革

オンリー1 とは、他の会社にないものを持っていることである。そこで、オンリー1 を作るにはどうしようか?と社員と共に考えるようになった。

水道配管業の場合、水漏れがなくて当たり前であり、技術の上でのオンリー1 はなかなか打ち出せない。

そこで、今まで当たり前に思われてきた休憩時間を廃止する方針を打ち出した。

休息時間の廃止

今、働き方改革などで、就業時間を制約されている。

しかし、昼食時間を除く休憩時間は、仕事のリズムを乱し、仕事を遅くすることにもなる。

「仕事は楽しく、作る喜びを味わえることが出来れば、本来休みなどいらない筈である」と社員全員が考えるようになったのである。

こうして、休憩時間を無くしてしまった。

オンリー1 の結果

休憩時間を無くすと、早速次の効果が現れた。

  1. 仕事が速くなったため、お客様からの評価が、格段に挙がった。
  2. 仕事の切れ間が減ったことにより、ミスや忘れなどが無くなり、良い仕事をしているとの評価が得られるようになった。
  3. 早く仕事をこなすので、お客様からは、「手離れが良い」と評価されるようになった。
  4. 早く仕事を終わり、帰れるようになった。また、急な仕事にも対応できるようになった。

こうして良いムードの中、全てが好循環となり、2期目の決算も黒字計上した。

社員への還元

休憩を取らない仕事習慣は、会社の収支を格段に押し上げ、毎月必ず黒字計上出来るようになった。

社員への分配

社員一人一人の努力による黒字化に感謝。賞与として還元することにした。

  • 月間賞与
    毎月、目標達成の場合、少額ながら必ず支給した。
  • 盆暮れ賞与
    今まで出せなった、7・12 月の賞与を支給出来るようになった。
  • 決算賞与
    営業利益の 30%を目途に支給した。

その他、毎月お誕生日会などを中心に福利厚生の充実を考えた。

こうして、真の再生が達成した。

社長が真のプロ経営者に生まれ変わり、「再生」を果たす

社長の奮起

これで、経営目的の、「どんな流れにも呑まれず流れに乗る」が達成出来たのである。形式上の再建、つまり、「一期目の黒字決算」はテクニックで達成出来るものであ
る。

しかし、それ以降、黒字決算を続けることは社長の自覚により、「真のプロ経営者」にならなければ出来ないことである。

これこそが、社長が真のプロ経営者に生まれ変わり、黒字経営を続けられる真の再建、つまり「再生」と言うべきものにふさわしい姿と思われる。

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