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再生過程において社長の自殺による幕引き|再生による再建失敗事例

再生過程において社長の自殺による幕引き

依頼内容

借入金、他債務の支払い不能からの再建を依頼された。

経緯  

K音響製作会社は業界では老舗企業だったが、ビデオからCD、DVDと急激に移り行く社会の変化に乗り遅れた状態だった。

借入金過多、サラ金依存、税金滞納、社会保険料未払い‥。

ほぼ倒産状態だったが、
社長はなんとか切り抜けたいという。

それならやってみようということになり引き受けた。

再建方法〈内外に公表しながらの再生〉

即、手を打つべきことはまず、

返済や手形決済を止め、同時に毎月の収支を黒字にする

ことだった。

幸いにして毎月の収支は、借入金の返済交渉や未払い金の支払い交渉、そして税金、社会保険の分割納付ができれば成り立ちそうだった。

営業面は、利益率の確保と不採算部門の撤退等をしながら徹底的に

 

【ムダ・ムラ・ムリ】

 

を省き、さらに営業店舗、事務所の統廃合などにより固定費を圧縮することにより営業利益の黒字化の目途をつけた。

再建計画書の作成

そして未払いや借入金、税金などを棚上げとする再建計画書を作成した。

3日後、各債権者へ再建計画書を提示しながら分割猶予の交渉に入った。

  • 未払い金、買掛金については棚上げとし、長期分割払いとした。
  • 借入返済は金利のみとし、返済は数千円単位とした。
  • 滞納税金は長期分割払いで了承を得た。
  • 社会保険は一旦退会した。

社長の報酬を極端に低くして、社長一人が加入していることを条件に期限付きで認めてもらい滞納分は長期払いで了承を得た。

サラ金は整理すると30社くらいはあった。

これらをほぼ1,000円程度の返済で一方的に押し切った

時間があれば、過払い請求が出来るものもあったと思われるが、とにかく時間が無いので、余裕が出てからじっくり過払い請求をして、払い過ぎたお金を取り戻すことにした。

社長の自殺による幕引き

社長の自殺

最後に残ったのが仕入れ先に対する手形の不渡り通知だった。

約20社計3,000万円を月末に決済しなければならなかったが、不渡りとする交渉を私1人で行くつもりでいたので、社長に1回だけ同行するようお願いした。

すると、

「古川さん、何とかなるから行かなくていいよ」

という。

その時20日であり月末決済日まで10日間も無いのである。

本当に出来るのかな?と心配になりながら自宅にいると、事務員から電話が入った。

なんと社長がトラックに飛び込んで自殺したのである。

びっくりした。

おそらく業者に頭を下げて手形の決済を伸ばしてもらうことが出来なかったものと思われる。

プライドが許さなかったようだ。

生命保険の功罪

生命保険の功罪

こうしてその手形決済は生命保険金によって賄われた

お金と命を引き換えにしてしまったが、本当に気の毒だった。

かわいそうでならなかった。

もっと気を使うべきだったと反省した。

生命保険に入っていることで命を犠牲にしてしまったが、生命保険に入っていなければ自殺をしなかったのではないかと思われ、生命保険のあり方に疑問を感じた

生命保険のメリット

掛け捨て型のものは、不慮の事故などをカバーするものとして必要だが、貯蓄型も考えてみたい。

社員に対する退職金についても全損となる中退共よりも有利であり、経営が傾いた時には活用できる。

特に経営者自身の退職金などの利用は、財務面でメリットが大きく、役員報酬と比較しながら多いに活用したいところだ。

生命保険の功罪

古川益一

倒産ギリギリに追い詰められた経営者は、生命保険に頼りがちになり、まじめな社長ほど自分の死を以って支払おうとします。

精神的に追い詰められると正常な判断が出来なくなり、
咄嗟に死を選ぶことも無い訳ではありません。

そこに生命保険に加入していれば、
その想いは更に強くなります。

これ以降は、生命保険は真っ先に税金などの差し押さえの対象になることからも早めに解約する事を勧めることにしています。

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